こんにちは、LeeStyles(リースタイルズ)です。
あなたは残業と言われるとどんなイメージがありますか?
残業は家に帰る時間が遅くなるから嫌だなって考える方もいると思いますし、逆に残業代で儲かるからラッキーって考えている方もいると思います。
そんな残業時間ですが、最近になって働き方改革として規制が強化されたことは何となく噂で知っている方も多いはずです。
実は、その規制は「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」という、働き方改革の中でも主要となる施策の中で取り上げられており、政府としても力を入れている領域ですので、どんなものしっかり理解しておくことが大切です。
したがって、今回は「働き方改革であなたの残業時間は本当に変化するのか」というテーマでお話していきたいと思います。
今回の記事は特に、
- 「残業時間に関する法律上の変更をざっくり解説してほしい。」
- 「法律の変更によって、自分の残業時間はどう変わるのかな?」
- 「そもそも本当に働き方改革って効果があるのかな?」
という方は必見です。
今回の残業時間に関する話で押さえておくポイントは次の3つです。
- 背景として、「世界的な残業大国」と「労働力不足」の2つがあり、残業時間の見直しがスタート。
- 改正において、「2つの上限規制」と「36協定」の存在がポイントに。
- 残業時間を減らすだけではなく、生産効率を高めていくことも忘れずに。
早速、それぞれについてざっくり解説していきます。
残業時間の見直しが始まった背景

まず、なぜ残業時間の見直しが始まったのでしょうか。
この背景としては、様々考えられますが、
- 日本は他国と比較して残業時間が長い
- 労働力不足を解消する施策の1つとして
の2つを今回は代表として挙げたいと思います。
では、それぞれについてざっと確認していきましょう。
日本は他国と比較して残業時間が長い

出典: 労働政策研究・研修機構(JILPT)
これは、日本の労働時間を世界の主要国と比較したものです。
1980年代を見てみると、日本はダントツで労働時間が長かったのがわかると思います。そこから少しずつ改善はされてきたものの、現在でも十分上位に位置していますよね。
このような統計データは国としても見過ごせないですし、他国からも批判を浴びることとなります。
例えば、ドイツと比較してみると年間で約400時間もの差があることになります。これらの国の水準に今後どれだけ近づけていけるかが課題です。
労働力不足を解消する施策の1つとして

出典:総務省統計局ホームページ
こちらのグラフからわかる通り、平成7年(1995年)を境に15~64歳(=生産年齢人口)は減少しており、かつ平成4年(1992年)を境に生産年齢人口が全体に占める割合も減少しています。
働き手はこの生産年齢人口に基本的に属するわけですから、つまり労働力不足が起こっているということです。
そして、この労働力不足を解消するために始まったのが、政府による「働き方改革」です。
さらにこの話を深堀していくと、労働力不足を解消するには次の図のようにいくつか選択肢が考えられます。

政府が働き方改革として具体的に行っている施策に関しても、基本的に上の選択肢に該当しています。
では、今回の記事で取り上げている「罰則付き時間外労働の上限規制の導入など長時間労働の是正」の施策はどのように該当しているかというと、青ゾーンの中の「1.出生率を向上させる」と「4.作業スピードを向上させる」 です。
もし働いている人が削減された労働時間を育児に充てられれば、以前よりも家庭内の育児環境は整いますよね。そうすれば、その環境に安心した家庭は出産や育児にチャレンジしていこうという気持ちになりますし、結果的に国全体としての「1.出生率を向上させる」ことにも繋がります。
また、労働時間が削減されることは身体的にも精神的にも安定に繋がります。過労死なんて言葉を聞いたことあると思いますが、それは長時間労働を継続した結果、身体も精神も維持できなくなってしまった結果ですよね。そのような悲しい出来事もなく、健康的に最高のコンディションで日々働くことが出来たら、とても仕事がはかどりそうですよね。そして、結果的にそれぞれの働き手の 「4.作業スピードを向上させる」ことに繋がるのです。
以上をまとめると、長時間労働の是正によって「1.出生率を向上させる」と「4.作業スピードを向上させる」に貢献し、さらにその先にある労働力不足の問題も解消しようとしているということです。
ちなみに、この労働力不足を解消する原理については、別記事で詳しく紹介しているので、こちらも是非ご覧ください。
どのように法律が変わるのか

では、ここまでは残業時間の見直しが始まった背景について解説してきましたが、ここからは具体的に働き方改革によってどのように残業時間の法律が変わるのかについてお話していきたいと思います。
上限規制がより厳格化
上の図が厚生労働省がまとめた改正前と改正後の比較です。
主な変更点は、
- 月45時間・年360時間が原則化された。
- 特例措置に対しても、年720時間・複数月平均80時間・月100時間未満の上限が設けられた。
の2つになります。
その他細かいところのルールはあると思いますが、とりあえずはこの2つをざっくりと押さえておけば良いと思います。
また、ついに中小企業でも2020年4月からこの上限規制が開始することになっています。特に規模の小さい企業では、従業員が汗水垂らして頑張って働くことで支えられてきたところも多いと思いますので、それらの企業が今回の法改正にどれだけ耐えられるか、またはどれだけの社内変革を起こせるのかが注目ポイントです。
36協定について
時間外労働の話をする際に、よく出てくるところなので一応触れておきます。
まず、36(サブロク)協定とは、法定労働時間を超える際に時間外労働について労使間でしっかり協定を結ぶというものです。
今回の法改正を受けて、36協定に関する書類のやり取り等についても、政府からしっかりアナウンスされています。具体的にどのように書類に記載すればいいか等ですね。
ここで重要なのは、あなたの時間外労働は36協定によって労使間で納得した上で決定されているということです。提出していないなんて会社があるという話も噂でありますし、労使間協定がどれだけ本当に機能しているかわかりませんが、定義上ではそうなっているということを頭の片隅に入れておくといいかもしれません。
一部事業では適用外も
実は、今回の上限規制ですが、一部例外があります。
それは、下の5つの事業です。
- 建設事業
- 自動車運転の業務
- 医師
- 鹿児島県及び沖縄県における砂糖製造業
- 新技術・新商品等の研究開発業務
本当にあなたの状況は変化するのか

ここまでは具体的にどのように法改正するのかについてお話してきました。
しかし、
- 「本当に法改正によって自分の働く環境は変わるのかな?」
- 「何かこの法改正の問題点とかってないのかな?」
って気になる方もいると思うので、続いては法改正の課題や予想されるリスク等について解説していきます。
ここでは、次の3つについて取り上げたいと思います。
- 特例の存在
- サービス残業が進む可能性
- 確実に世の中の関心が高まっているのも事実
それでは、1つずつ確認していきましょう。
特例の存在
先ほど、具体的な法改正について解説した際に、5つの事業に関しては残業時間の法律が緩くなっているという話をしました。
しかし、それらの中には労働環境が問題視されているものも多いです。
例えば、建設業に関しては東京オリンピック開催にかけてかなり多忙になっていますし、トラック運転手などはAmazon等のEC発達で年々忙しさが増しています。だからといって、その人たちの働きがなければ社会が上手く回らなくなってしまいます。働き手の健康を維持するのか、社会が上手く回ることを優先するのか、このジレンマが難しいところです。
つまり、働き方が特に問題視されている事業に限って残業規制が緩くなっている、という矛盾が存在しています。
今後、これらの事業に関しては自動運転をはじめとしたテクノロジーの導入にも注目していきたいですよね。それらの技術がもしかしたら既存の働き方を大きく変えるキーとなるかもしれません。
サービス残業が進む可能性
まず、こちらの式をご覧ください。

この式からお分かりの通り、労働時間を減らしたいのなら作業スピードを向上させるなり、作業量を減らすなりしなくてはなりません。
では、続いては下の式をご覧ください。

この式から、時間外労働時間を削減したい場合は、全体の実労働時間も減らしていかなければならないということがお分かりになると思います。
つまり、この2つの式で言いたいのは、時間外労働時間を減らしていくためには、作業スピードを向上させたり、無駄な業務を削減したりして、生産効率を高めていく必要があるということです。
逆に、生産効率が向上していないのに時間外労働時間だけ削減していけば、やらなければならない仕事がまだ残っているのに帰らなければならないという状況が続くということになります。
そうすると、これまで従業員の長時間労働によって売上をカバーしていた企業は、経営が傾いてしまう恐れがありますよね。
この生産性の考え方については別の記事でも解説していますので、そちらも併せてご覧いただくことで理解が深まると思います。
話を戻すと、上記のような状況では、これまでの労働時間を結局維持するしかないという自社都合の考えと、今回の法律改正による時間外労働の上限規制の板挟みになります。
そこで、各企業の裏側で起こる可能性があるのはサービス残業です。データ上は退勤したことになっているけど、実際はそれよりも遅く働いているという状況は十分に起こりうる話です。
さらに、その状況が社内で当たり前の文化になってしまう場合は重症です。結局、本来あるべき働き方改革のゴールというものは各企業で働く皆さんの意識が変わることなわけですから、その意識が一切変わっていないのであれば働き方改革は失敗しているといえるでしょう。労働時間が変わらずに、ただ残業申請が出来なくなってしまったわけですから、従業員側としてはむしろ悪化です。
政府のアナウンスに対して、社内の働き方を経営者から従業員まで全員でどれだけ意識的に見直せるかが大切だといえます。
確実に世の中の関心が高まっているのも事実
ここまではマイナス面を主に取り上げてきましたが、全国的に働き方改革に対する関心が大きく高まったことは事実です。
企業によってはサービス残業が裏で起こる可能性があるかもしれませんが、それでも日本社会のマジョリティの意見としては残業をなくして効率的に働こうという流れに確実になってきています。
実際に社内で「残業を減らそう!」という良い方向の考えで一致した企業は、様々な取り組みにチャレンジしています。「いっそ週休3日制を取り入れてみよう!」なんて会社も出てきていますよね。
また、そもそもの労働時間や時給といった考えをなくしていくという発想もあります。時給という考えが頭の中にあると、残業をしていても「残業代が結局もらえるわけだし、悪くないな。」という考えになってしまいます。
したがって、例えば、評価制度を成果報酬型に変えるなんてことをしてみると、時間ではなく成果で物事を考えられるようになります。良い成果を出せば早く帰れるってなったら、みんなやる気が出ますよね。もちろん、成果報酬型に変更すれば、それはそれでまた別の問題が出てくると思うので、最終的には各企業やあなた自身が何を大切にするかです。
今のあなたに出来ること

いかがでしたでしょうか。
今回は、「働き方改革であなたの残業時間は本当に変化するのか。」というテーマで解説してきました。
今のあなたに出来ることは、
- 労働時間ではなく、労働によって生み出した成果に意識を向けて働いてみる。
- 現場目線として、周りの人たちと一緒に今の働き方を考えていき、積極的に上に対して発信していくことで、マネジメント層の意識も変えていく。
- 残業時間に対する自社内の意識があまりに低い場合や、状況を変えていける可能性が限りなくゼロに近い場合は、転職なども検討してみる。
だと思います。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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